2020年4月2日
ポイント
●微量栄養素である鉄分が流氷から海へ放出される仕組みを解明。
●流氷から放出された鉄分が植物プランクトンの増殖を促すことを実証。
●オホーツク海の水産資源はどのように変わっていくのか,将来予測に繋がることが期待。
概要
北海道大学北極域研究センターの漢那直也博士研究員と同低温科学研究所の西岡 純准教授らの研究グループは,オホーツクの流氷に含まれる鉄分の量と存在状態,その起源を明らかにし,流氷から放出される鉄分が生物に使われやすいことを証明しました。
流氷は,様々な起源からなる粒子状の鉄分を非常に多く含んでいますが,粒子状の鉄分が海水中に放出された際に,植物プランクトンが鉄分を使えるのかどうかはわかっていませんでした。本研究では,流氷が融けた状態を模擬した培養実験を行い,植物プランクトンが使うことのできる流氷中の鉄分の存在状態を調べました。その結果,植物プランクトンは流氷から放出された粒子状の鉄分を使って増殖することが確認されました。
本研究成果は,「オホーツクの流氷は栄養物質を運び,豊かな生態系を支えている」という従来の認識を科学的見地から裏付けるもので,流氷がオホーツク海の生物生産に果たす役割の理解が進むと期待されます。
本研究は,GRENE北極気候変動研究事業,科学研究費補助金,キヤノン財団,タスマニア大学ツネイチフジイ奨学金,低温科学研究所共同利用の助成を受け,タスマニア大学海洋南極学研究所の研究者らと共同で実施しました。
なお,本研究成果は,2020年3月31日(火)公開のMarine Chemistry誌に掲載されました。
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