2021年6月8日
ポイント
●カムチャツカ半島の全河川から周辺海洋に流出する河川流量の算出に成功。
●カムチャツカ半島からの河川流量の多寡がオホーツク海の高密度陸棚水形成域の海洋表層塩分に関与していることを発見。
●陸-海結合システムに新たな視点を追加。
概要
北海道大学大学院環境科学院博士後期課程の史 穆清氏と同大低温科学研究所環オホーツク観測研究センターの白岩孝行准教授及び三寺史夫教授の研究グループは,ロシア科学アカデミー極東支部火山?地震研究所のヤロスラブ?ムラビヨフ博士と共同で,ロシア連邦水文気象環境監視局が管理する河川流量データを用いてカムチャツカ半島から周辺海域に流出する河川の全流量を推定し,河川流量とオホーツク海の高密度陸棚水形成海域の表層塩分に関係があることを見出しました。
海洋に対する河川水の割合はわずか0.003%に過ぎず,河口域や沿岸を除くと,海洋に対する河川の影響はこれまで限定的と考えられていました。本研究は,限られた地域の河川流量が半球規模の海洋循環に影響を与える可能性を示した貴重な成果です。オホーツク海のオーバーターニング(鉛直循環)は,北太平洋の海洋循環を通じて気候に影響だけでなく,栄養塩の循環をも駆動し,オホーツク海や親潮海域の生物生産にも大きく関わっています。そのため,本研究は,オホーツク海のオーバーターニングの機構解明や予測に新たな視点を与えたものと評価されます。
本研究成果は,2021年5月24日(月)公開のJournal of Hydrology: Regional Studies誌にオンライン公開されました。
なお,本研究は,科学研究費補助金?基盤研究A(課題番号:17H01156)の助成を受けて実施されました。
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