2021年6月7日
北海道大学
日本医療研究開発機構
ポイント
●皮膚に水ぶくれができると,毛は自らの成長を犠牲にして傷の修復を優先することを発見。
●毛の幹細胞は,水ぶくれによる傷を修復するために細胞を供給。
●表皮水疱症など,皮膚に水ぶくれを生じる病気への治療応用が期待。
概要
北海道大学大学院医学研究院皮膚科学教室の夏賀 健准教授らの研究グループは,毛の細胞が自らの成長を犠牲にして皮膚の水ぶくれ(表皮下水疱)を治癒させることを発見しました。
成長の完了した組織が損傷を受けると,組織は発生プログラムを発動させて損傷部位を修復します。しかし,成長過程の組織が損傷を受けると,どのように修復するか詳しくわかっていませんでした。
研究グループは,皮膚の水ぶくれの治癒過程で,組織発生プログラムが抑制されることを見出しました。これに伴って,水ぶくれの部位では毛の成長が遅延していました。細胞系譜追跡実験,数理モデルによって,毛の幹細胞から細胞が供給されて水ぶくれが修復されるとわかりました。以上から,水ぶくれができると毛の幹細胞は毛の成長を止めて,水ぶくれの修復を優先すると結論づけました。
本研究の成果は,表皮水疱症をはじめとした皮膚に水ぶくれを生じる病気(水疱性疾患)の治療法開発へ応用されることが期待されます。
なお,本研究成果は,2021年6月4日(金)公開のEMBO Reports誌にオンライン掲載されました。
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