2022年3月18日
ポイント
●進化学における過去最大規模の国際共同研究によって地球規模の都市進化現象を証明した成果。
●都市化が全世界的にシロツメクサの進化に顕著な影響を与えていることを解明。
●新発見だけでなく,インクルーシブ(社会的包摂)?サイエンス促進の理念に基づく成果。
概要
北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの内海俊介准教授,安東義乃学術研究員が参画する国際共同研究チームGLUE(Global Urban Evolution Project)は,都市化が地球規模で生物進化に影響を与えていることを明らかにしました。人は地球環境を大きく作り変えています。なかでも,地球上で最も環境改変が進んでいるのは都市です。今回の研究では,地球規模で,気候帯も異なる様々な都市において,平行的に類似した進化が繰り返し起きているのかという問いについて初めて検証しました。5大陸?26か国?160都市で,都市環境と約11万個体のシロツメクサを分析した結果,世界中の都市の環境条件は,近くの郊外よりも地理的に離れた都市間でよく似ており,シロツメクサはしばしば類似したパターンで進化していることが明らかになりました。シアン化水素を生成するシロツメクサの性質は,植食者への防衛や乾燥ストレス耐性に貢献しますが,多くの都市でこの性質が喪失していく進化が起きていました。シロツメクサという身近で世界中に存在する植物から,人々の暮らす都市が生命の進化のありかたを変える決定的な証拠が得られました。
本研究成果は,2022年3月18日(木)公開のSCIENCE誌にオンライン掲載されました。
論文名:Global urban environmental change drives adaptation in white clover(都市化は地球規模でシロツメクサの適応進化を促進する)
URL:https://www.science.org/doi/10.1126/science.abk0989
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